●氷川神社の存在意義

 そのほとんどが東京・埼玉にしか分布していない氷川神社も、スサノオを祭る神社である。総本社は埼玉県の大宮にある氷川神社だが、仏教の影響を受けていない数少ないスサノオ神といえるのかもしれない。この氷川神社が祭られている場所の多くが、古来、自然災害に苦しんでいた場所ではないかと考えられている。

 スサノオというのは、今では各ご利益を与えてくれる神さまとして扱われているが、古代人にとっては厄難を引き起こす荒ぶる神さまの代名詞であり、自然災害はスサノオが暴れているからだと考えていたとしても不思議はない。スサノオを鎮めるために社を作り、供物を奉じ、ご機嫌をとってきた─古い時代の人たちの知恵であろう─これが現在の神社の成り立ちだ。

●厄除け祈願のヒーロー

 こうして、スサノオは現在の「厄除け」の神さまとなった。病気や災難から人々を守り、土地に安寧をもたらす神として全国にその名を知らしめている。余談だが、最近ではお寺でも見るようになった「茅の輪くぐり」は、スサノオに習合した神さま由来の話から来ている行事である。今ではスサノオに関係ない寺社でも大祓(6月と12月の晦日に行われる儀式)には登場するようになった。

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