シラスウナギ漁の密漁があとを絶たない…(※イメージ写真)
シラスウナギ漁の密漁があとを絶たない…(※イメージ写真)
六道慧さん (c)村尾昌美
六道慧さん (c)村尾昌美

 2018年1月10日、朝日新聞夕刊にこんな記事が掲載された。

【『ブルーブラッド』作者の六道慧さんはこちら】

「ウナギ稚魚 暴力団から守れ!」

 ウナギは卵から育てる完全養殖が困難なため、稚魚である天然のシラスウナギが不可欠だ。シラスウナギは別名「白いダイヤ」と呼ばれ、高値で取引されている。

 高知県では、シラスウナギ漁を県漁業調整規則などに基づいて規制しているが、それでも密漁が後を絶たない。影で暗躍しているのが暴力団なのだという。暴力団が密漁を行い、暴力団関係者がいけすなどの施設を管理していたのだ。

 そんな「生き物ビジネス」に目をつけたのが、作家の六道慧さん。「警視庁特別取締官」シリーズの第2巻『ブルーブラッド』では、暴力団が取引の禁止されている絶滅危惧生物を密輸し、組長宅の地下を秘密水族館にしていたというのが、物語の始まりだ。

「私なりに生き物ビジネスを考えたとき、こうすれば、もっと儲けられる! というアイデアがありました。密漁して、水族館のような施設で飼育しながら、販売ルートを作る。最近では、色々な保護団体の存在もあって、従来よりも動物が入手しづらくなっているという現状があります。需要はあっても、供給が少ないのですから、ビジネスとして考えた場合は、大きく伸びる可能性がある。もちろん、小説なので、違法取引として描くわけですが……。そんな中で、こういう事件があったので、考えていたことは間違っていなかったと思いました」

 このアイデアを思いつく前には、こんな新聞記事も目に入ったという。

北海道で、暴力団がサケを捕まえていたというのです。産卵のために遡上してくるサケを捕まえて、その場で捌いてイクラだけを取り出す。取り出したイクラは、17キロ15万円程度で売買していたそうです。でもこれは、サケの遡上を寒い中でひたすら待ち続け、それを捕まえて捌くことを考えると、とても効率が悪い。彼らを捕まえる警察官も大変だったそうです。サケの遡上場所は見晴らしがよく、犯人を隠れて待つことができない。そのために、地元の人が所有していたコンテナの中に、暖房もつけずに捜査員が潜み、犯人がやって来て、サケを捕獲する瞬間まで待っているのです。サケを取る方も、犯人を捕まえる方も苦労が絶えないでしょう。それよりも、もっと効率的に利益を上げられる方法があるのではないかと思ったのです」

次のページ