ヤクルト・山田哲人 (c)朝日新聞社
ヤクルト・山田哲人 (c)朝日新聞社

 2015年から2年連続で打率3割、30本塁打、30盗塁の『トリプルスリー』を達成した山田哲人(ヤクルト)。しかし、昨年はワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の影響もあってか、全試合フルイニング出場を果たしたものの、レギュラーを獲得した2014年以来、全ての面で最低の成績に終わった。チームも球団ワースト記録となる96敗を喫するなど試練のシーズンとなった。そこから復活するには何がポイントになるのか。過去3年の成績を見ながら検証してみたいと思う。

 山田のバッティングにおける持ち味は、類まれなそのリストの強さにある。そのため基本的には内角に強く、少しでも甘く入るとスタンドまで運ぶことができる。2015年の日本シリーズ第3戦では3打席連続ホームランを放っているが、千賀滉大(ソフトバンク)から放った3本目は内角いっぱいの148キロストレートをとらえたもので、並みの打者であればバットを折られてしまうようなボールだった。

 さらに良い時の山田は下半身の粘りでボールを待つことができ、決め球の変化球も拾って長打にするケースも少なくない。速いボールは反応とリストで、誘うボールは下半身の粘りで、という二段構えのスタイルが高打率と長打を兼ね備えられる理由と言えるだろう。

 しかし、昨年の山田は見るからに下半身の粘りを欠いており、それはカウント別の成績に如実に現れていた。過去3年間のツーストライク後の打率を見ると、2015年は.256(309打数79安打)、2016年は.223(260打数58安打)、2017年は.169(272打数46安打)となっており、いかに昨年追い込まれてからが弱かったが分かる。また7回以降の打率でも2015年が.294(163打数48安打)、2016年が.299(144打数43安打)、2017年が.180(150打数27安打)と疲れの出てくる終盤に打てていなかったことも明らかだ。

 下半身のコンディションが過去2年と比べて万全でなかったことは、盗塁の数字にも現れている。単打、もしくは四死球で一塁に出塁した機会から何度盗塁を試みたかという数字を盗塁企画率として見てみると、2015年は.204(一塁への出塁186回、38回盗塁企画)、2016年は.174(一塁への出塁184回、32回盗塁企画)、2017年は.102(一塁への出塁177回、18回盗塁企画)という結果になっている。昨年は圧倒的な最下位に終わり、個人タイトルに集中しても批判されない状況だったにもかかわらず、これだけ盗塁企画数が減っているということは、下半身と走ることに対する不安を裏付けていると言えるだろう。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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山田の成績低下は彼の責任だけではない!