なので、私は脳を鍛えるため、ひたすら息子の発言を待つという精神を貫くことにしています。あとは「なんでこうなると思う?」と質問して考えさせます。息子が「なんでそうなるの?」と聞いてきたら、まずは「なんでだと思う?」と質問返しします。そして、息子の言葉をオウム返しして「ちゃんと話を聞いているよ」と伝えます。

 ただ先日、息子がハサミで遊ぼうとしていたので「ハサミは1人で使っちゃダメだよ。なんでだと思う?」と聞きました。息子は考えた後で「ママがダメって言うから?」と、創造性の欠片もないがっかりな答えを返してくれました。そこで、化粧品のティントで手を赤くして「ほら見て! 今ママ、間違えてハサミで手を切っちゃったの。ハサミこわっ。刃物は痛いしこわっ!」と迫真の演技で、ハサミの危険性を教えました。とりあえず、危険なことは論理性よりも事実を教えなくてはですね。

 そして、創造性を発達させるのも、親があまり口出ししないことが大事かな、と思っています。子どもは、言語を覚える3~5歳ごろになると、描く絵が変わってきます。空は青く、女の子はピンクなお洋服で、顔にはちゃんと目や耳がついています。客観性を身に着けてきたともいえますが、もし大人があえて「空って青いよね?」と描かせているなら、それは単に「画一性」を持たせているだけです。

 先日、息子に紙を渡すと色鉛筆を全色握って、何個も丸を描いていました。そのとき、母親が「色鉛筆は1本で」と注意しようとしたので、止めました。今は、とりあえず「描くことは楽しい」と思わせて、「○○しなくてはいけない」という型にははめたくないのです。そうして完成した、殴り書きされた絵は、カラフルな丸がいっぱいで、タイトルは「ママ」。「わぁ~綺麗に描けたね」と褒めるしかありませんでしたが、もう少し器用になって周囲をよく見て、もう少し可愛い(というか人間ぽく)ママの顔を描いてくれたら嬉しいな、と思った次第です。

 そして想像性は、息子だけでなく私も試されています。夜寝るときのお話は「桃太郎」などではなく、即興で「今日は恐竜とライダーがバスに乗って丸井に行くお話して!」という要求が……、こっちは息子の言葉の成長をじっくり待っているというのに、私が少し内容を考えていると「早くお話して」と急かしてきます。親の心、子知らず、ですね……。

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杉山奈津子

杉山奈津子

杉山奈津子(すぎやま・なつこ) 1982年、静岡県生まれ。東京大学薬学部卒業後、うつによりしばらく実家で休養。厚生労働省管轄医療財団勤務を経て、現在、講演・執筆など医療の啓発活動に努める。1児の母。著書に『偏差値29から東大に合格した私の超独学勉強法』『偏差値29でも東大に合格できた! 「捨てる」記憶術』『「うつ」と上手につきあう本 少しずつ、ゆっくりと元気になるヒント』など。ツイッターのアカウントは@suginat

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