そう説明してくれた土肥義弘投手コーチも左腕。現役時代、三塁けん制は「正直、やったことがないですね。まずやりません」と苦笑い。それでも、三塁へのけん制が「ある」と認識させるだけでも、走者は警戒する。そうすれば、リードが一歩、いや半歩でも小さくなる。そうすれば、本塁で刺せる、あるいは突っ込めないかもしれない。

 宮崎、高知のキャンプを継続して視察しているオリックス・渡辺正人スコアラーはけん制練習に「西武らしいですよね」とうなっていた。「これで、各球団のスコアラーが球団への報告書に“西武は三塁けん制がある”って書くわけじゃないですか。そうしたら、現場はどうしても警戒しますもんね」。三塁けん制を実際にやるぞという“けん制”する効果も大きいというわけだ。

 昨季のチーム560失点は優勝したソフトバンクより77点も多い。10年ぶりのV奪回へ、三塁へのけん制といった細部にも着目しながらチームを仕上げていく。かつての西武らしさを少しずつ取り戻しつつあるように映るのは、キャンプでの「練習スタイル」にも現れている。(文・喜瀬雅則)

●プロフィール
喜瀬雅則
1967年、神戸生まれの神戸育ち。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当22年。その間、阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の担当を歴任。産経夕刊の連載「独立リーグの現状」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。2016年1月、独立L高知のユニークな球団戦略を描いた初著書「牛を飼う球団」(小学館)出版。産経新聞社退社後の2017年8月からフリーのスポーツライターとして野球取材をメーンに活動中。