今回はヘロインの売人とユーザーのことを取材した際のことだが、このような両者の駆け引きは、ほかの種類の麻薬でもいえることである。マリファナならば、種や茎が多く入っている質の悪いものを売りつけてくる売人がいて、知っている人なら相当買い叩くか、買い取りを拒否するレベルのものを、何も知らない素人に売りつけたりする。

 買う側にも売る側にもノウハウや知識が求められる薬物ビジネスではあるが、このクレームを受け付けてくれるところはない。売人は「嫌なら買うな」の姿勢を崩すことはないし、よほどの常連にでもならないと、上物を無条件でまわしてくれることはないだろう。実際、日本でもアメリカでも、常連客になれば、フリーの客と売人という関係のまま、ストリートではなく、売人の連絡先(主に携帯番号)で直接の取引が可能になるのだ。

 そして、ヘロインのような強い薬物であれば、常連になることは、高い確率で死に近づくことでもある。使用は決しておすすめしない。

(文/ジャーナリスト・丸山ゴンザレス、イラスト/majocco)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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