一方のリリーフ陣では昨年34セーブをマークした田島慎二が中心となるが、それ以上に楽しみなのがドラフト1位で入団した鈴木博志だ。その魅力はとにかくストレートの速さと強さ。短い回であればコンスタントに150キロ台をマークし、球威で圧倒することができる。本人も最初からリリーフ希望を明言しており、起用法に迷いがないのもプラス材料だ。鈴木と田島で8回、9回をしっかり締める形が確立できれば、他球団にとっては脅威となるだろう。他に昨年は故障に苦しんだ岡田俊哉、育成出身ながら昨年序盤はフル回転の活躍を見せた三ツ間卓也なども楽しみな存在だ。

 ここまで名前を挙げた日本人選手の平均年齢は25.2歳。吉見一起、山井大介、岩瀬仁紀、浅尾拓也などかつてのチームを支えた選手の名前を挙げなくても、若手中心である程度陣容を組めるようになったということは、数年前のベテラン偏重だったチーム構成を考えると大きな変化であることは間違いない。そして今後の大きな希望となりそうなのが今年のドラフトで獲得した素質豊かな高校生右腕を3人獲得だ。2位の石川翔は高校ナンバーワンの呼び声高い正統派の本格派投手。バランスの良いフォームからコンスタントに145キロを超えるストレートを投げ込む。昨年夏の甲子園で全試合リリーフ登板し優勝投手となった清水達也(4位)、167cmの上背ながら総合力では高校生トップクラス山本拓実(6位)も巡り合わせ次第では上位指名の可能性もあった実力者だ。

 今年だけ見るとまだまだ万全とは言えない投手陣だが、将来を考えると楽しみな要素が増えてきたことは間違いない。現在の若手が完全な中心選手となり、今年の高校卒ルーキー達が一軍に定着する頃には、投手王国が復活していることも十分に考えられるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文
1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら