大きな飛躍が期待される小笠原慎之介 (c)朝日新聞社
大きな飛躍が期待される小笠原慎之介 (c)朝日新聞社

 球団ワースト記録を更新する5年連続Bクラスに低迷している中日。今年のキャンプでは松坂大輔の加入で大きな注目を集めているが、過去3年間の成績を見ると過度な期待はかけづらいというのが首脳陣の本音ではないだろうか。昨年の投手成績を見ると規定投球回に達したのは大野雄大とバルデスの二人だけで、バルデスは既に退団している。このことだけでも今シーズンも苦しい戦いが予想されるが、投手陣の顔ぶれを見てみると数年前と比べるとだいぶ将来像が見えてきた印象も受ける。そこで改めて中日投手陣の今シーズン、近未来を展望してみたい。

 まず先発陣だが、ともに高校卒のドラフト1位で入団した鈴木翔太と小笠原慎之介の二人にブレイクの兆しが見えることが何より大きい。鈴木翔太は度重なる故障でプロ入り4年間は伸び悩みが続いていたが、昨年5月に初勝利を挙げるとその後も度々好投を見せて5勝をマークした。小笠原は今年でまだ3年目だが1年目から先発で多く起用され2勝、5勝と順調にステップアップしている。鈴木は突如制球を乱す点、小笠原は立ち上がりが不安定な点など若手らしい課題はあるものの、ともに高校時代からフォームに悪い癖がないのが頼もしい。1年間を戦い抜ける体力ができれば、リーグでも屈指の左右の両輪が誕生する可能性も十分にあるだろう。

 この二人に続いてもらいたいのが大学卒2年目の柳裕也と笠原祥太郎だ。昨年はともに1勝に終わりプロの洗礼を浴びた形となったが、大学時代から持っている能力の高さは折り紙つきである。柳は大きなカーブ、笠原はブレーキのあるチェンジアップと他の投手にはない独自の変化球を持っているのは大きい。球威で押すタイプではないだけに、緻密さを身につけることが2年目の飛躍のカギとなりそうだ。ここまでは実績の少ない若手が並んだが、又吉克樹、大野雄大の二人も忘れてはいけない。この6人とメジャー通算51勝の新外国人ジーによるローテーション争いは、他球団と比べても楽しみな部分が多いように見える。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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