室内練習場で体を動かすソフトバンクの選手 (c)朝日新聞社
室内練習場で体を動かすソフトバンクの選手 (c)朝日新聞社

 ソフトバンクの内野陣といえば一塁・内川聖一、二塁・明石健志、三塁・松田宣浩、遊撃・今宮健太。そのポジションと名前を列挙して、異論を唱える野球ファンはほとんどいないだろう。とはいえ、彼らといえども不死身ではない。不慮のアクシデントやケガはつきもの。ただ、ソフトバンクはその備え、危機管理にも抜かりはない。

 コンディション不良を理由に川崎宗則が未契約の状態で、宮崎キャンプにも現時点で不参加。内野の全ポジションをこなせるユーティリティーのベテラン内野手の不在は痛いが、この“枠”に台頭してきたのが、捕手の山下斐紹との交換トレードで楽天から加入した西田哲朗だ。2月17日に行われた今年初の紅白戦でも白組の三塁を守り、4回の守備では内川の三塁線の当たりに対し、横っ跳びでの好捕。打っても中前打の後、即座に二盗を決めてアピール。「一日で終わらないように続けていきたい」と貪欲だ。

 さらには、内川や松田のベテラン組の“有事”に備えて、キューバ人のジュリスベル・グラシアルを獲得した。昨年3月のWBCではキューバ代表として出場した大型内野手で、2次ラウンドの日本戦では巨人・菅野智之から本塁打も放った。外国人枠の関係もあり、起用法は現時点ではっきりしないが「日本でプレーすることをずっと願っていた」という32歳。同じキューバ出身で1年年下のデスパイネの存在もあって、チームへの順応もスムーズにいくだろう。まさしく、備えあれば憂いなしとはこのこと。充実の巨大戦力に、貴重な一枚がまたもや加わったのだ。

 投手で期待が高まる1人が、育成選手の19歳左腕・長谷川宙輝だ。東京・聖徳学園高出身、甲子園出場の経験もなく全国的には無名の存在。「球の速い左腕がいる」と編成部とスカウト陣が総出で高校まで行き、ブルペンでの投球練習を見た瞬間に、そこにいた全員が「獲ろう」と意見が一致したという隠れた逸材は昨年9月の2軍デビュー戦で149キロを記録。2月17日の紅白戦でも、背番号「134」ながら紅組の4番手で2回を投げ、148キロをマークした。「腕がパーンと振れたら、そうそう(打球が)前に飛ばないんじゃないかな」と工藤公康監督が潜在能力を高く評価するサウスポーは、開幕前の支配下への昇格が有力視されている。

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『3層制』が見事に機能しているソフトバンク