そして、相手がスキを見せた瞬間、獲物に飛びかかる野生動物のように、すかさずツッコミを入れていく。威圧的な言葉を投げかけるときもあれば、場合によっては頭をはたくこともある。ただ、その一連の流れを終えた後、浜田は必ず朗らかに笑う。この笑顔がすべてを帳消しにして、和やかな雰囲気で番組は進んでいくことになる。

 一見すると、浜田はどんな相手にも遠慮せずに攻撃的なツッコミを入れている感じがする。しかし、実際にはそうではない。1月25日放送の『めざましテレビ』(フジテレビ系)で本人が語っていたところによると、番組のゲストと一通り話してみたときの雰囲気で、どのくらい強めにいくのかを判断しているという。

 だから、大物ゲストを相手に浜田が無謀に攻めているように見えても、その人が実際に気分を害したりするようなことはほとんどない。浜田は個々のゲストに合わせて、それぞれに許されるギリギリのところまで攻め込んでいく離れ業を演じているのだ。

 アスリートやミュージシャンなど、テレビでトークをすることが本業ではない人たちが、浜田に導かれてポロッと本音をこぼしたり、かわいらしい一面を見せたりすることがある。浜田がMCを務める番組では、そこが見どころになっている。

『芸能人格付けチェック』も『プレバト!!』も芸能人が自分のセンスを試されるという趣旨の番組だ。だが、浜田自身には「センスで勝負している」というイメージはない。むしろその逆の、豪快でがさつな印象の方が強いかもしれない。ただ、実はこの点が浜田の強みにもなっている。

 浜田は番組の中で「センスなし」と判定された芸能人を容赦なくこき下ろす。しかし、浜田には自分のセンスをひけらかすようなところがないため、そこに「上から目線」の嫌な感じが漂わない。むしろ、「俺もセンスないけどね」と肩を並べて励ましてくれるような優しさが感じられる。

 ツッコミの本質は「愛」だ。相手の言ったことを面白く生かしてあげたい、という優しさからツッコミが生まれる。浜田がMCとして高く評価されているのは、愛のあるツッコミでゲストの魅力を引き出してくれるからなのだ。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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