■良医の育成は創設者の願い

 医学部附属高校ならではのプログラムとして、「ドクターロード」がある。1年次には医大のキャンパスにある現代医学教育博物館やドクターヘリの見学、川崎医科大学附属病院の医師への1対1のインタビューなどを行う。

「1年の後半から2年の前半まで、月に1回、川崎医科大学の教員が大学で学ぶ項目の一部を高校生向けにアレンジした講義を受講します。このほか、川崎医科大学の研究室での体験実習、障害者・高齢者のための関連施設での実地研修を行います。2年次には、研究テーマを決め、実験、観察を行います」

 ドクターロードの内容は、医学部生が体験するような内容だ。高校生のうちからこれらの体験ができることは恵まれているといえよう。

 少人数教育で全寮制のため、授業料と3食付きの寮費を合わせると年間600万円弱の費用がかかる。このため、保護者の8〜9割が医師だという。

 難関の医学部の現役合格は難しく、多浪生も少なくない。浪人すれば、私大医学部専門予備校の場合、年間授業料が500万円以上かかるところも多い。また、浪人すると働く期間が短くなり、医師としての生涯所得が減ることになる。

「医学部入学に何年もかかり、医師国家試験の合格率があまり高くない大学に入ることを考えると、国家試験の合格率が全国平均を上回る川崎医科大学に、現役で9割以上が合格する附属高校への進学を優先的に考える保護者の方もいらっしゃいますね」(新井校長) 

高校時代から医療体験ができ、少人数でじっくりと学べる環境のなかで、創設者の願いである「良医」が育つのだろう。

(文/庄村敦子)

※『AERA Premium 医者・医学部がわかる2018』から抜粋