そこで和田さんは、バストと背丈を組み合わせた独自のサイズを作り、体にフィットしたシルエットが出せるように改善。ボタンの間が広がってしまう問題はシャツに隠しボタンをつけて解決した。

 特にジャケットは前のボタンが閉められないという悩みが多く、ボタンが閉められても胸が突っ張る分、動くと胸元が大きく開いて着崩れてしまう。そこで、試行錯誤の結果、ボタン裏に隠しフックを取り付けることで着崩れが防げることがわかった。

「胸が大きくてもくびれがはっきりしている人が多いので、着やせは1つのテーマです。でも、胸の重さで肩が凝りやすいので、少しでも快適に過ごしてほしい。そのために袖ぐりや背中のつっぱりなど、ニーズとして言葉に出てこないインサイトの部分まですくい上げて、工夫を重ねました」

 シャツだけでも型を5回も作り直し、さらに4回の微調整を経て、マスター(標準型)にたどり着いた。目指すのは「お客さんがデザイナー」という、草の根的なブランドだ。

 そして、「overE」女性たちが“胸を張って生きていく”ために、社会を変えていきたいと考えているという。

 服選びの難しさは、体が大きい人やふくよかな人が着る「グラマーサイズ」と混同されることが一因だった。「胸が大きい」と口に出すことの抵抗感も減らしたい。そのために、女性ファッション誌で使われる「大胸」や、性的な意味合いが強い「巨乳」ではなく、新しいキーワードをつくりたい。そんな思いをブランド名の「overE」に込めた。

「日常生活で『私は胸が大きい』ということを『私はover Eです』と言い換えて使ってほしいですね。最近、『私はunder Eなんだよね』という使い方をする方もいるんですよ。いつか辞書に載るような言葉になるといいなと思っています」

(文/浅見良太)