――レターポットをリリースして一ヶ月が経ち、4万3千ユーザーを突破したそうですね。この期間で、嬉しかったこと、悲しかったこと含め、予想外だったことはありますか?

 自分が開発するとき全く考えていなかったことで、めちゃくちゃ嬉しいことがありました。

 レターポットには「残り10文字」のように、手持ちの言葉数があるんです。

 そこで見えた世界って、手持ちの文字が限られている時に、人間は、誰かの揚げ足をとることに使うのではなく、お世話になった人に感謝の言葉を伝えるんです。残り10文字で汚い文字を使うのであれば、僕は人間のことはあまり好きじゃなかったはずです。

 つまり、レターポットの世界に悪口が一切ない。僕のもとに15000件レターが届いているんですけど、誹謗中傷が一件もないんです。このキングコング西野に誹謗中傷がないことは異常事態なんです(笑)

 僕たち人間は、使える文字に限りがあると自覚すれば、罵詈雑言を誰かに浴びせたりすることはない。つまり、元来、文字は美しいということです。

 これに気づいた瞬間が一番嬉しかった。自分の中でレターポットを始めた意味がありました。

――昔、出会った方の言葉が印象に残っているそうですね。

 はい、別々の友人2人から連絡があって、その友人の友人の1人が末期がん、もう1人が急性白血病で、2人とも余命宣告をされていたんです。

 1人は、30代前半で、妻と子どももいる。その2人の見せてもらった文章や、話したときに使っていた言葉が、あまりに美しかった。「これ、いったいなんなんだ」ってすごく気になっていたんです。

 彼らは生き延びることを諦めてはいないんですけど、最悪のことも覚悟していて、自分たちが残り使える文字数が限られていることを知っているので無駄なことに使わないんです。レターポットを使い始めて、この人たちの文字が美しい理由がわかったんです。人間は、言葉が有限であると自覚したとき、こんなに言葉が美しくなるんだと気づいた瞬間に「うわっ」と思いましたね。

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