はれのひの篠崎洋一郎社長の会見をテレビで見た野本さん母娘は、「へらへらしていたことが許せなかった。今日のイベントに来て、直接、謝罪してほしかった」と口を揃える。

 ただ、はれのひの従業員らに対しては、「対応などはとても親切だった。彼らも給与が未払いとニュースで知り、気の毒だなと思いました」と気配りを忘れなかった。

 着物を着た野本さんは「これだけ多くのボランティアの人が集まってくれて、いい人ばかりで嬉しい」と話した。

 傍で見守っていた母、香矢子さんも「はれのひに一度、裏切られたので、娘が本当に着物を着れるのか半信半疑だった。実現して感無量です。どこに感情をぶつけたらいいのかわからなかったけれど、今日で救われた気がします。娘には、困ったときに誰かを助けてあげられるような人間になってほしいです」と語った。

 交通事故に遭い、成人式当日に着付けを諦めざる得なかった長佐古(ながさこ)南さん(20)も参加。

 言葉を詰まらせながら、「一度諦めた成人式がこんな形で実現するとは思ってもいなかった。式に行けなかったときに、励ましてくれた親友に今日の写真を見せたい」と喜びを語った。

 参加した新成人らは口々に、「生地がとてもかわいい」など目をキラキラさせながら着物選びを楽しんでいた。他にも「成人式の費用を払ってくれた母親に『ありがとう』と伝えたい」などの声があがった。

 この日、新成人に用意された着物枚数は150着。キンコン・西野さんの呼び掛けで、100人を超えるボランティアスタッフ、200人の着付けやヘアメイクスタッフが新成人を迎え入れた。協賛企業は62社に上ったという。新成人らは西野さんと一緒に午後6時ごろから、横浜港を出港する船に乗り約2時間のクルージングを楽しむという。(田中将介)