千賀秀信(せんが・ひでのぶ)/計数感覚・養成コンサルタント。マネジメント能力開発研究所・代表。東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。中小企業診断士。株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、経営と会社数字を関連させて考えられる能力(計数感覚)を高めるためのプログラムを考案。上場企業や公的機関などで研修を行う(撮影/写真部・小原雄輝)
千賀秀信(せんが・ひでのぶ)/計数感覚・養成コンサルタント。マネジメント能力開発研究所・代表。東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。中小企業診断士。株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、経営と会社数字を関連させて考えられる能力(計数感覚)を高めるためのプログラムを考案。上場企業や公的機関などで研修を行う(撮影/写真部・小原雄輝)

 多くの働く人にとって最も気になることは、やはり自分の給料。自分の給料は安すぎるのではないか、がんばっているのに昇給しない、どうすれば収入アップにつながるのか、など悩みは尽きない。『数字オンチがみるみるなおる! 計数感覚ドリル』(朝日新聞出版)の著者で、計数感覚・養成コンサルタントの千賀秀信さんに、「適正な人件費」についてうかがってみた。

■自分が努力しても給料は上がらない

――売り上げが好調にみえた企業が倒産したというニュースを目にすることがあります。たとえば、営業マンとして売り上げを上げれば、会社は儲かり、きっと自分の給料も増えるはず、と単純に考えるのは間違いでしょうか。

「売れている=儲かっている」ではありません。たくさん売れていても粗利益率が低ければ儲けはそれほどでもないでしょう。在庫処分のために安売りしているのであれば、手元のキャッシュが増えず資金繰り倒産するということもあるのです。

 粗利益率が高い場合にも注意点はあります。そういった会社は、「高付加価値型」といって、付加価値を上げるために固定費をかけて人材育成し、高い質のサービスや商品を提供することが前提です。固定費をかけた分、ある一定の粗利益を生まなければ赤字になってしまいます。

“会社経営”を“会社数字”で思考する能力「計数感覚」がないと、安売り戦略をとる競合他社に客をとられまいと、焦って値下げしてしまいがちです。すると、いつのまにか固定費をかけているにもかかわらず粗利益率が低いという事態になってしまいます。

――なるほど。特に競争が激しい業界ではどうしても低価格で客を集めようとしてしまいます。単純に売り上げをのばしても、会社に貢献できるとは限らないのですね。

「高付加価値型」の戦略をとっているのに、固定費のかけ方が中途半端な会社も見直しが必要です。アルバイトを安い賃金で集めたり、社員の給与も抑えたりして固定費を節約することでコストをさげようとすると、サービス低下、優秀な人材の流出につながります。こうした例は飲食業界に多く見られますね。単価は高いのに、接客サービスの質が悪いというところがあるでしょう。経営者に計数感覚があれば、この価格帯ならば固定費をどれくらいかけるべきか考えることができるはずです。

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