住み慣れた地域から離れる場合、当事者にはストレスが少しずつ蓄積する可能性も (※写真はイメージ)
住み慣れた地域から離れる場合、当事者にはストレスが少しずつ蓄積する可能性も (※写真はイメージ)

 高齢者ホームの選択肢が多様化するなか、老後の安心を左右するようなさまざまな課題・トピックも浮上している。昨年7月には、東京・杉並区が静岡・南伊豆町と自治体間連携で開設する特別養護老人ホームの入所者を募集した。発売中の週刊朝日ムック「高齢者ホーム 2018 プロに教わるやすらぎの選びかた」では、その注意点を解説している。ホーム選びの参考にしてほしい。

*  *  *

 杉並区のある東京都は、2010年〜25年にかけての65歳以上の高齢者人口の増加率は25.7%と推計されている。これは全都道府県のうちの13位だが、「増加数」に限れば68万人と第1位となる。そして、75歳以上の後期高齢者に絞ると、「増加数」は76.2万人と、さらに増える。

 ここで問題になるのが、東京およびその近郊における介護施設などの収容力が追い付くのかどうか。

 25年といえば団塊世代が全員75歳以上となる年だが、この段階で4万床以上不足するというデータがある(日本創成会議「東京圏高齢化危機回避戦略」から)。しかし、そもそも東京などの都市部は地価が高いなど、大規模な施設を数多く整備するうえでは困難も多い。その点で先の不足数は数字以上に深刻といえる。

■杉並区が南伊豆に特養ホーム開設 移住で心得たいこと

 そうしたなか、杉並区が自治体間連携によって静岡県南伊豆町に特養ホームを開設したというケースは、今後、都市部の自治体も追随していく可能性が高いといえる。確かに都市部の急速な高齢化に対する切り札の一つではあるが、入居希望者としては心得ておきたいこともある。

 住み慣れた地域から離れる場合、食習慣や地域事情も変わってくる。一時的な居住ならいいとしても、それが永住となったとき、移住する当事者にはストレスが少しずつ蓄積する可能性もある。特に高齢者の場合は、環境変化になじむのに周囲が思う以上の苦労を負いやすい。追随する自治体が、そうしたメンタルのフォローなどにどこまで配慮してくれるかを十分にチェックしたい。

次のページ