珍名踏切マニアがいく! 温泉に踊りまで…「虚無僧踏切」と名付けられるだけの理由 (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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珍名踏切マニアがいく! 温泉に踊りまで…「虚無僧踏切」と名付けられるだけの理由

連載「珍名踏切が好き!」

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今尾恵介dot.#鉄道
宇宿駅に入ってきた指宿枕崎線の山川行き快速「なのはな」は乗車率も高い

宇宿駅に入ってきた指宿枕崎線の山川行き快速「なのはな」は乗車率も高い

虚無僧踏切。警報機はあるけれど、ふつうの自動車は通れない狭さ

虚無僧踏切。警報機はあるけれど、ふつうの自動車は通れない狭さ

今回紹介した踏切周辺の地図

今回紹介した踏切周辺の地図

 踏切の名称に惹かれて何十年の、いわば「踏切名称マニア」である今尾恵介さんが、全国の珍名踏切を案内してくれる連載。今回は「虚無僧踏切」を紹介します。

【写真特集はこちら】今尾恵介が紹介する珍名踏切 <虚無僧踏切編>

*  *  *
 鹿児島県の薩摩半島。錦江湾に面した東海岸には指宿枕崎(いぶすきまくらざき)線という長い名前の路線が通っている。かつては指宿線だったのが、戦後に枕崎まで延伸されてこんなに長くなった。モノレールを除けば日本最南端を走る鉄道である。

 横浜港から船に乗って翌々日の昼すぎに鹿児島に着いた。そんなアプローチをしたのは、たまたま拙著『地図マニア 空想の旅』(集英社インターナショナル)が第2回斎藤茂太賞に選ばれ、副賞として8日間の上海クルーズをいただいたからである。乗ったのは7万5338トン、全長268メートル、乗客定員1870人という巨大な船で、デッキ13層に及ぶ「スーパースター・ヴァーゴ」で、私の部屋は11階のバルコニー付きスイート。

 生まれてから大学生まで通算15年ほどは横浜市民であった私も、横浜港から船に乗った経験は1度もない。マンションの上層階から見下ろすような高さの部屋におさまり、みなとみらい地区のネオン輝く夜景を見ながら大桟橋を出た時には、思わず「我が日の本は島国よ……されば港の数多かれど この横浜に勝るあらめや」と、森鴎外作詞の横浜市歌が口をついてしまう。私だけでなく横浜市で小学生時代を過ごした人の多くは、文語体のこの歌詞を意味もわからず暗記しているのだ。

 市街南部に位置する鹿児島マリンポートを15時過ぎに下船した私は、徒歩で約30分の宇宿(うすき)駅へ向かった。船には22時までに戻ればいいので余裕は十分ある。ホームに入ってきた列車は15時46分発の山川行き快速「なのはな」号で、その通り全身黄色。乗車率はなかなか高い。

 52分の乗車で指宿駅に到着した。11月中旬の16時38分といえば東京ならもう薄暗いが、経度で10度近く、「時差」に換算すると約40分に相当するだけ西に位置するため、まだ明るい。それでも急速に傾く太陽を横目に見ながら、明るいうちに目的の踏切へたどり着こうと早足になった。向こうから自転車で走ってくる男の子が「こんにちは!」と元気に挨拶してくれるのが嬉しい。


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