高齢者ホームの選択肢が多様化するなか、老後の安心を左右するようなさまざまな課題・トピックも浮上している。昨年3月には、介護施設の職員による高齢者への虐待が2015年度中に408件あり、過去最多を更新したことが報じられた。これは厚生労働省が調査を始めた06年度から9年連続の増加だ。発売中の週刊朝日ムック「高齢者ホーム 2018 プロに教わるやすらぎの選びかた」では、その背景を解説している。ホーム選びで気をつけておきたいこととは。
*  *  *

 介護施設の職員による虐待の増加については、さまざまな要因が考えられる。利用者や家族の権利意識や周囲の職員らの人権意識の高まりによって、以前は隠れがちだった事例の告発が増えたという見方もある。

 しかし、それ以上に指摘されるのは、有効求人倍率3.02(2016年)に象徴される介護現場の厳しい人手不足だ。たとえば、制度上の人員基準は満たしても、即戦力に足る人材確保が難しく、経験の浅い職員に重要な職務を任せざるをえない。

 一方で、介護施設などを利用する人は、高齢化で認知症となる割合も高くなっている。認知症の人の場合、「自分がなぜここにいるのか」「目の前にいる人は誰なのか」などを認識する力が衰えていることが多い。職員側にそうした人への十分な対応スキルがなく、加えて「高齢化で体調悪化のリスクもある」という人のケアを手がけるといった、緊張度の高い職務を任されればどうなるか。

■現地見学では職員の様子・動きに注意

 当然、過重なストレスはたまりやすくなるが、人員配置が綱渡りだと組織内で十分なメンタルケアをほどこす余裕もなくなる。ストレスがたまったからといって即、虐待につながるわけではないが、全体のリスクが底上げされるのは間違いない。

次のページ
介護施設選びで気をつけるべきこと