ソフトバンク・松田宣浩 (c)朝日新聞社
ソフトバンク・松田宣浩 (c)朝日新聞社

 気がつけば、2月1日のキャンプインまであと数日。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「本塁打をめぐる明と暗」編」である。

*  *  *

 ホームランか、ファウルか―

 4月28日の巨人vsヤクルト(神宮)で、ポール際に上がった2つの際どい打球の判定がそのまま両チームの明暗をくっきりと分けた。

 まずは巨人。1回表、坂本勇人のタイムリーで1点を先制し、なおも1死一、二塁、5番・マギーがヤクルトの先発・石川雅規の内角カットボールをジャストミート。打球は左翼ポールの遥か上を通過し、場外へと消えていった。

 飛距離は十分だったが、打球がポールギリギリを通過したため、リプレー検証に持ち込まれた。打った本人は「走りながらだから、よく見えなかった。万が一、ファウルになれば、打席に立たないといけないので、(リプレー検証の間)気持ちを切らさずにいた」という。

 結果はホームラン。巨人は4対0と一気にリードを広げた。これに対し、ヤクルトも7点をリードされた7回1死一、二塁、山田哲人が篠原慎平の外角高め143キロ直球を右翼ポール際に運んだ。中村稔一塁塁審は「ホームラン!」と判定したが、ライト・長野久義が両手を挙げて「ファウルではないか?」とアピール。マギー同様、リプレー検証に持ち込まれた。

 だが、今度は「ファウル」に覆り、打ち直しとなった山田は四球を選んだものの、次打者・バレンティンの遊ゴロ併殺でスリーアウトチェンジ。当初の判定どおりだったら、3点を返し、8、9回の反撃にも期待がつながるところだったのに、結果は0対7の完敗……。

 “幻弾”に終わった山田は「入ったと思った。惜しかったですね。ポールに当たったと思った」とガッカリ。

 そして、両者の明暗は、シーズン最後まで影響を及ぼす。マギーがリーグ2位の打率3割1分5厘、18本塁打、77打点とまずまずの成績で移籍1年目のシーズンを終えたのに対し、山田は打率2割4分7厘、24本塁打、78打点、14盗塁と不本意な成績で3年連続トリプルスリーを逃してしまった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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