自動運転(AV)に関しては、技術的にはウーバーやグーグル(ウェイモ)などの米系が先行している。またAIやサーバーセキュリティ技術に関しても、米国の優位性は明らかだ。

 だが、現状を見回してみると、自動運転車の技術はほぼブレイクスルーに近づいている中で、現在は、社会全体として制度設計や、インフラ対応などを討議する段階に来ているのは間違いない。

 そんな中で、シンガポールやハンガリー、台湾などは「国策としての自動運転への取り組み」を開始している。自分たちの国をモデルケースとして、交通法制、安全基準、事故等への責任や保証の枠組み、そして自動運転による社会的・経済的な発展チャンスの追求をしようというのだ。自動運転の実用化という革命を「社会改革」の契機として、そして国の発展の契機として戦略的に捉えているとも言えるだろう。

 今回のシンガポールのイベントは、その意味でシリコンバレーなどの巨大イベントとは、一味違うものになりそうだ。(北米在住のジャーナリスト・作家/冷泉彰彦)