9月29日のロッテ戦(ZOZOマリン)、2対0の6回1死一塁で打席に入ると、成田翔の直球を低い弾道で左翼席に運んだ。5回にT-岡田が9万9999号目を放ち、ベンチが「あと一本」と盛り上がると、マレーロは「自分が打つ」と宣言。まさに有言実行のメモリアル弾だった。

「今日はいつもより気をつけました」。というのは、「ベースの踏み忘れで本塁打が取り消されないよう注意した」の意味だが、これは偽らざる本心だった。

 B級ニュースファンならご存知のように、マレーロは日本デビュー戦となった6月9日の中日戦(京セラドーム大阪)、5回に逆転2ランを放ちながら、本塁ベースを踏んでいないと判定され、来日初アーチが幻と消えていた。

 以来、「同じ轍は二度と踏むまい」と肝に銘じていた。

 だが、もしデビュー戦での踏み忘れがなく、本塁打として記録されていたら、通算10万号は同僚の岡田になり、マレーロは10万1号になっていた。この差は大きい。

 結果的にベース踏み忘れのチョンボが回り回って、球史に残る栄誉を手にしたのだから、まさに災い転じて福となす?

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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