阪神・糸井嘉男 (c)朝日新聞社
阪神・糸井嘉男 (c)朝日新聞社

 気がつけば、2月1日のキャンプインまであと半月を切った。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「判定をめぐるトラブル編」である。

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 バレンティンvs矢野耀大コーチの乱闘劇の記憶もまだ新しい5月3日の阪神vsヤクルト(神宮)で、今度はコリジョン騒動が勃発した。

 6回に2対1と逆転した阪神は8回2死一、三塁、鳥谷敬の一ゴロで三塁走者・糸井嘉男が本塁を衝いたが、ファーストからの送球を受ける捕手・中村悠平が体で走路を塞ぐ形になった。

 直後、両者は本塁上で火花を散らして激突。スライディングに跳ね飛ばされ、仰向けにひっくり返った中村を、糸井が「お前、コリジョンを知らんのか?」とばかりににらみつけるひと幕もあった。

 判定はセーフ。中村は追いタッチだったから、それは当然として、なぜかブロックに対する警告は出されなかった。このプレーにより、右足を強打した糸井は、右膝の古傷への影響を考慮して8回裏の守備から交代。

「右足はチョー痛い(笑)。まあ、あの1点は大事だったので」と冗談めかしてコメントしたが、大事に至らなかったのは幸いだった。

 一方、中村は激突プレーの興奮もさめやらぬ8回2死一、三塁の打席でマテオから死球。一歩間違えば同点にされかねないピンチで、状況的にはあり得ないものの、ネット上で「報復ではないか?」の声が出るなど、ファンの間でもこのカードは因縁試合じみてきた。

 試合後、金本知憲監督は「(審判には)警告の判断をしてほしかった。ショートやサードだったら、こちら(三塁側)にそれることがあって、偶然のブロックはあるけど、一塁(からの送球)なんだから、ちゃんと見てもらいたい」と不満をあらわにした。

 その後、審判団も「本来(捕手に)警告を出すべきだった」と回答したが、コリジョンが危険な走塁やブロックによるけが人を防止するために設けられたルールであることを考えると、「どの道セーフだったから」で済む問題ではなく、後味の悪さも残った。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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またしても因縁のカードで…