家入はこう語る。

「資本主義を考えたときに明らかに行き過ぎていて、よりもどしが起きている。高度経済成長を経て豊かさは実ったが、個人の欲求レベルはてっぺんの自己実現欲求の段階まで来てしまった。自分は何のために生きているんだろう、何を目指せばいいんだろうという悩みが今後さらに増えていくと思う。昔のように車を買いたい、良い時計をつけたい、家族を持って一軒家に住みたい、など目指すものがあって幸せの形が共有できた時代は頑張れた。今は何を持って幸せとするか、というモノサシがなくなってしまった。都内で夜景の見えるマンションのために必死で働く、年収は低いけど地方で5時には仕事を終えて海を見ながらビールを飲む、いろんな幸せのカタチがある」

 つまり、豊かさは実り、幸せも選べる時代になったのだ。

「だが少子高齢化が進み経済が小さくなり、社会ではどんどん格差が拡がり、貧しい人やセーフティネットからこぼれ落ちる人たちが出てくる。今後、そういった人たちが、つながりで寄り添って生きていくためのコミュニティが必要。従来、強者とされた人たちは、その強さゆえにコミュニティを作れず、孤独になるかもしれない。近年、取り沙汰されている分断社会というのは、縦で見たら分断されているけれど、横で見たら、自分たちの持つステータスやキーワードでつながっているから分断されていない。経済圏同士が繋がっていれば幸せに生きていける。驚くべきことにコンプレックスがないことがコンプレックスという若者が増えている。つながれるタグがないことに不安を憶えているということ」

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