もう一つ理由がある。北朝鮮が参加しないことで戦争のリスクが高まり、EUなどが選手派遣を見合わせれば、韓国は国際社会から見捨てられたような印象を持たれてしまう。それでは、今後の北朝鮮との交渉上、非常に不利になるという懸念がある。是が非でも世界中の国に参加してもらい、多くの国の首脳に参加してもらうことにより、韓国が世界と一体となっている姿を北朝鮮に示したい。そうすれば、北朝鮮の孤立がより鮮明になり、今後の交渉で優位に立てると考えているのだ。

■オリパラ後の緊張緩和継続が韓国の狙い

 こうした韓国の動きに対して、安倍政権は非常に不満を募らせている。表向きは特に批判はしないが、プレスに対して、「どうせこんな対話は失敗に終わる」「北朝鮮に利用されるだけで愚の骨頂」「米国も怒っている」などという趣旨の情報をリークし、米国政府に対しても、オリパラ後にはすぐに米韓合同軍事演習を行うべきと伝えている。

 仮に、3月下旬以降に米韓合同軍事演習が実施されれば、北朝鮮は態度を硬化させ、再び4月から5月にかけて核実験やICBM発射などの挑発行為に出る可能性がある(4月、5月は北朝鮮にとって重要な記念日が目白押しで、例年核実験やミサイル発射がよく行われている)。

 それを受けて、昨年の制裁強化の効果を見極めるとしていた米国政府が、制裁の効果がなかったと判断して、さらなる強硬措置に出ることも十分に考えられる。

 韓国は、その結果、偶発的な衝突が生じることやそれが本格的な戦闘につながることを本気で心配している。そのため、何とか米朝双方が自重する状況を可能な限り長続きさせたいと考えているのだ。

 その観点で非常に重要なのが、五輪以外のテーマで合意した軍事当局同士の会談の実施だ。韓国は、軍事協議を行っている最中であるからという理由で、米国に軍事演習を五輪後もさらに延期しようと提案するだろう。

 また、それ以外のテーマ、例えば離散家族の再会行事についても今後協議を行うために調整を進めると思われる。もし、それが実現することになれば、その実施までは演習を控えるというような口実もできる。

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