それから約5年。すべてをやり尽くしたという感じでいったんその活動に終止符を打ったドゥービーズは、80年代末に、トム・ジョンストンを含むいわゆる黄金期のラインナップで復活。89年夏、コロラド州デンヴァーのレッド・ロック・アンフィシアターでのリユニオン・ライヴを観ているのだが、彼らは、あえてそこに合流しなかったマクドナルドも含めて全員が「兄弟」なのだという姿勢を選曲面などで打ち出していて、このときもまた、素直に感動させられてしまった。
と、ここまで書いてきて、スティーリー・ダンとドゥービー・ブラザーズが、この夏、LAフォーラムなどアリーナ級の会場、約40カ所を回るツアーを行なうことを知った。いわゆるコ・ヘッドライナー・ツアーと呼ばれるスタイルらしく、当然、合流もあるはず。日本にもやって来てくれるといいのだが。
さて、「大物アーティストの来日公演」「1月16日」「Doobie」というキーワードがつづくと、どうしても触れておきたくなるのが、1980年1月16日に起きたあの事件。
38年前のこの日、ポール・マッカートニーがウイングスのジャパン・ツアーのため成田空港に降り立っているのだが、そのとき、税関チェックで彼のスーツケースから大麻が発見され、逮捕されてしまったのだ。
ウイングスはビートルズ解散後の1971年にポールが妻リンダや元ムーディー・ブルースのギタリスト、デニー・レインらと結成したバンドで、「マイ・ラヴ」「バンド・オン・ザ・ラン」「ジェット」など多くの大ヒット曲を残している。このツアーでは日本武道館などで11回もの公演が組まれ、当然のことながらチケットはすべてソールドアウトだったそうで、ファンは強烈なショックを受けたはずだ。結局、麻薬取締官事務所や警視庁での取り調べと拘留は下旬までつづき、ようやく25日に、彼は極寒の日本を去ったといわれている。
その事件から4カ月後に発表されたポール・マッカートニーのアルバム『マッカートニーⅡ』に「Frozen Jap」というタイトルの曲が収められていて、ファンのあいだでいろいろと憶測を呼んだらしい。ただし、録音は前年の夏だったそうなので、深い意味はなかったのではないだろうか。(音楽ライター・大友博)