DeNA・平良拳太郎 (c)朝日新聞社
DeNA・平良拳太郎 (c)朝日新聞社

 気がつけば、2月1日のキャンプインまであと1ヵ月を切った。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「男の意地を見せました編」である。

【写真】山口俊の心境はいかに

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 『DeNAの山口俊が巨人FA移籍した』

 文字にしてたった18字だが、これが巨人入団4年目を迎えた21歳右腕・平良拳太郎の運命を劇的に変えた。

 2017年1月、平良は山口の人的補償としてDeNAへの電撃移籍が決まる。若手投手が不足するチーム事情から、トルネード気味の変則サイドから140キロ台の直球とカットボールを繰り出す“斎藤雅樹2世”に白羽の矢が立てられたのだ。

 平良はその前年の4月7日に行われた阪神戦(東京ドーム)でプロ初先発初登板。4者連続奪三振を記録したが、4回途中4失点で無念の黒星デビュー。その後は右肘痛もあり、リベンジをはたせないまま、シーズンを終えていた。

 それだけに、トレード通告には、「突然のことでビックリした」という。だが、すぐに気持ちを切り替え、「選んでいただいてうれしく思います。(移籍)1年目からしっかり力を出して、チームに貢献したいです」と新天地での飛躍を誓った。

 開幕を2軍で迎えた平良は、5月10日に1軍登録され、同日の中日戦(ナゴヤドーム)で移籍後初登板。得意のカットボールで内野ゴロの山を築き、5回を3安打1失点。勝利投手の権利を得てマウンドを降りた。

 そして、リリーフ陣が2点リードを無失点で守りきり、うれしいプロ初白星をプレゼント。人的補償で移籍後、初登板でのプロ初勝利は史上初の快挙である。

「本当にいろんなことがあった。いろんな人の支えがあったから勝てたと思う。こうやって使っていただいて、勝つことが(巨人とDeNAの)どちらに対しても恩返しになる。勝てて良かった」(平良)

 平良をプロテクトせずに失う形になった巨人は、FA移籍の山口も不祥事で出場停止の大誤算。「後悔先に立たず」を地でいったような結果になった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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巨人・亀井が屈辱を晴らす意地の一打