新宿ヒロクリニックの1カ月の夜間対応
新宿ヒロクリニックの1カ月の夜間対応

 往診は、訪問診療とならぶ在宅医療の2本柱だ。事前に予定して定期的に患者の自宅に行く訪問診療に対し、往診は、患者・家族からの要請に応じて自宅に行く。好評発売中の週刊朝日ムック「さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん」では、新宿ヒロクリニック院長の英裕雄医師を取材し、どんなときに往診しているのか、その実態についてたずねた。

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 在宅医療における往診は、日常的に訪問診療をしている患者が対象となる。一度も診療したことがない患者の呼び出しに応じるものではない。

 在宅医療をおこなう在宅療養支援診療所は、往診が24時間365日可能という要件になっている。

 それだけ聞くと、在宅医は昼夜を問わず年中無休で救急隊のような出動を繰り返しているように思えるかもしれないが、必ずしもそうではない。

 大都市型の在宅医療の草分け的存在である新宿ヒロクリニック(東京都新宿区)院長の英裕雄医師は、こう話す。

「日頃の訪問診療の際に、患者さんや家族の方には『困ったことがあれば、いつでも電話して相談してください』と伝えています。しかし、電話がかかってきても、それがすべて往診になるわけではありません。主治医が電話で指示を出すことで解決するケースも多いのです」

 新宿ヒロクリニックの患者数は、500人弱。当直態勢の夜間(18時〜翌朝8時30分)で月200~400件の電話がかかってくるが、そのうち往診に至るケースは平均すると約3割という。

「当クリニックの夜間往診の割合は、多いほうだと思います。往診の割合は、診療所の方針や考え方に大きく左右されるもので千差万別です。一般的にこれくらいが標準というものはありません」(英医師)

 訪問診療の際に、これから起こりうる病状の変化やそのときの対応法を家族に伝えておけば、往診の回数は減る傾向にあるが、どんなに減らせてもそれがゼロになることはないという。

■往診は病状の変化への対応だけではない

 たとえば新宿ヒロクリニックにかかってくる電話で、「薬を飲み忘れてしまったが大丈夫か?」「腰が痛むので痛み止めの薬を飲んでもよいか?」といった相談は、医師からの電話での指示で済むことが多いという。逆に、発熱やせき、痰(たん)がからむ、下痢など、患者の病状の変化に対しては往診することが多いそうだ。

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