気持ちが「そばにあるらしい」ことと、「つながっている実感がある」ことは違います。生活がうまく回っているなら気持ちがそばにあるらしいことは想像がつきます。しかし「つながっている」と感じるためには、求心力が必要です。絆といってもいいのですが、静止的な感じがする絆という言葉よりも、あえてダイナミックな感じがする「求心力」と言っています。恋愛初期を思い出してみれば恋愛感情というダイナミックな求心力があったはずです。

 求心力を作る要素のひとつは、今まで見えていなかった相手の素顔を知る体験です。

「中国嫁日記」というマンガご存知ですか? 中年の日本人男ジンさんと、若い中国人女性の月(ユエ)さんの結婚生活を描いた4コマ漫画です。その中に、自分たちが飼っていたを知人にあげるエピソードがあります。月さんがあまりに手際よく話を進めるので、ジンさんは、猫を手放したい月さんの陰謀では、と疑ったのですが、本当は月さんは猫に寂しい思いをさせてしまった自分たちに猫を飼う資格がないと自分を責めた末の苦渋の決断で、ものすごく苦しんでいることを知ったという話です。これは、今まで見えてなかった相手の本当の姿を一つ知った経験です。胸がキュンとしますよね。こういう経験で求心力がちょっと増します。

 お二人の求心力はどんな体験でしたか? 今年一年、パートナーの素顔をたくさん知れたら、きっと一緒にいることが幸せな一年になるはずです。(文/西澤寿樹)

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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