トライを決める帝京大のニコラス・マクカラン (c)朝日新聞社
トライを決める帝京大のニコラス・マクカラン (c)朝日新聞社

 ラグビーの大学選手権は1月7日、東京・秩父宮ラグビー場で決勝戦があり、10年連続のファイナリストとなった帝京大が9連覇を目指す。

 日本選手権に参加できた前年度までの4シーズンは、国内最高峰トップリーグ勢の撃破を目指してきた。年間スケジュールの変化(日本選手権での大学枠撤廃)に伴い目標値が縮小化された今季も、大学日本一になれるのだろうか。また今後、この天下をどう維持するかにも注目が集まる。

 帝京大は、他より先んじて肉体強化の環境を整えてきた。選手にまず誠実さを求めたことと相まって、筋骨隆々のアスリートを数多く育成。おかげで試合では、攻防の起点となる肉弾戦を終始、制圧できるようになった。勝ち続けるなかで優秀な人材を得るリクルーティングの質、プレースタイルの多様化にも成功してきた。

 大きな成果を示したのは、2015年の2月8日の日本選手権1回戦。現サントリーの流大(ながれ・ゆたか)キャプテンを擁する帝京大は、当時のトップリーグで10位だったNECを31-25で破った。

 学生が難儀するはずの社会人とのぶつかり合いで引けを取らず、対する瀧澤直キャプテンも「トップリーグレベルと言わざるを得ない」と認めた。当時から日本代表の強化合宿に呼ばれていたスクラムハーフの流は、接点の真横からのキックで陣地獲得合戦を優位に運び、トップリーグに所属するチームに勝利する成果を挙げた。

 グラウンド内の成功体験を積んでいくなか、帝京大の岩出雅之監督は「ダブルゴール」を強調。選手の卒業後の「幸せ」をイメージし、上級生が率先して掃除をするなどのクラブカルチャーを醸成。周囲から一目置かれるポジションを確立した。

 もっとも2017年度は、ことオン・ザ・フィールドでふたつの敵に苦しめられてきた。ひとつ目は追随する相手校の成長スピード、ふたつ目は自分たちの揺らぎである。

 11月5日の神奈川・相模原ギオンスタジアム、加盟する関東大学対抗戦Aの慶大戦で31-28と土俵際まで追い詰められた。2015年度は89-10で下していたカードだったが、この日は相手の攻撃が続いた際に防御ラインを乱した。

 公式会見に出た岩出監督は「我々にアジャストされているチームも多いので、楽には勝てない。厳しいゲームを勝つタフさを思い出させてもらえた」と語り、ひとつ目の敵にあたる、肉体面もしくは作戦面でのライバルの進化を認める。

 一方、日本代表経験のある堀越康介キャプテンは、ふたつ目の敵の存在に頭を悩ませていた。

「このチームは本当に必死に、危機感、緊張感を持ってやったら負けない。そういうものを引き出すのが僕ら4年生の責任で……」

 その13日後に神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で行われた明大戦は41-14で快勝し、伝統的なリクルーティングの強みを最大化しつつある相手を横綱のごとく退けた。ふたつある敵のうち、ひとつ目を一蹴したように映った。

 ところが12月23日、東京・秩父宮ラグビー場での大学選手権準々決勝では、関東大学リーグ戦3位の流経大を相手にやや苦戦。最終的には68-19で勝ったが、前半は28-14と打ち合った。

 慶大戦に続いて防御ラインの形成がやや遅れ、堀越とともに日本代表入りを叶えた尾崎晟也副キャプテンは「前半はどこか緩さ、ではないですが、甘さがあったのではないかと思います」と振り返る。少なくとも、ふたつ目の敵の攻略に難儀していた。

 基本プレーの積み重ねや選手層などに一日の長があるため、ふたつ目の「敵」に負けても試合には負けない。ところが、ひとつ目の「敵」の強靭さ次第では、ふたつ目の「敵」に邪魔されている間に星を落としてしまうのでは……。そんな外部からの帝京大への見立ては、年明け後は一応のピリオドを打ったように見える。

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年明けに変貌、決勝でふたつ目の敵に立ち向かう