YOSHIKIのタレントとしての魅力は、その極端なまでの二面性にある。かつて総理だった小泉純一郎にも愛され、天皇陛下御即位十年を祝う祭典で自作の奉祝曲を披露したこともあるYOSHIKIは、確固たる実績のある超一流アーティストである。しかし、テレビに出ているときには決して偉そうに振る舞うことはなく、気さくで穏やかな雰囲気をかもし出している。

 リハーサル中にカレーが辛すぎて帰ってしまった「カレーが辛かった事件」、シャワーの温度調節がうまくいかずに帰ってしまった「シャワーが熱かった事件」など、こだわりが強く気難しいところのあるYOSHIKIが引き起こしたトラブルは数多くあるのだが、それらのエピソードもどこか微笑ましく感じられるのは、彼の人柄によるものだろう。

 また、過去の歴史を知らない人には意外な感じがするかもしれないが、X JAPANはもともとバラエティ番組との相性がいいミュージシャンである。バンドがメジャーデビューする前から、YOSHIKIは「自分たちが有名になるためにはどんなものでも利用した方がいい」という割り切った考えを持っていた。

 彼らは、80~90年代に一世を風靡したバラエティ番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で、「ヘビメタ(ヘビーメタル)」の代表格としてたびたび出演していた。食堂で食事をしている客のところにいきなり乱入して、派手な格好で歌ったり演奏したりして大騒ぎする彼らは、当時は完全なキワモノ扱いだった。

 ただ、こういう企画に積極的に協力していることからも分かる通り、YOSHIKIは音楽業界でも一、二を争うほどの「シャレの分かる人物」でもある。自分たちの音楽を広めるためであれば、お遊び的な企画にも協力的な姿勢を見せてくれるのだ。

 老舗の呉服屋の長男として裕福な家庭に生まれ育ったYOSHIKIには、生来の品の良さが備わっている。だから、ロックバンドの一員として派手な格好をしたり、ステージ上で暴れ回ったりする一方で、落ち着いたトーンで話をすることもできるのだ。この「静」と「動」の二面性こそがYOSHIKIという人間の面白さの本質である。ちなみに、彼がバンド内でピアノとドラムを担当しているのも、まさに「静」と「動」を体現していると言える。

 最近のテレビで見るYOSHIKIは、今までよりさらに角が取れて丸くなっている感じもある。近いところでは、1月9日放送の『マツコの知らない世界 新春2時間スペシャル』に出演することも決定している。イジられるのが苦手なプライドの高いタイプのミュージシャンはバラエティ番組で苦戦しがちだが、何でもイジらせてくれるYOSHIKIはバラエティ向きの逸材だ。年末年始に話題をさらった彼が、これからタレントとしてますます人気を伸ばしていく可能性も十分にありそうだ。(ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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