これを聞いて私が思ったのは、「園長は本当に子どもに関する文献を読んでいるのか!?」ということ。

 幼稚園なんて、4月に生まれた子と3月に生まれた子では、おそろしいほど体格も知能も発育が違います。息子は、他の子と比べると日常生活でもやはりうまくできないことが多いので、同じクラスのおマセな女の子何人かがお世話してくれているそうです(こういう女の子は女の子で、将来ダメンズ好きにならないか心配ですが)。ただ、息子がこうした環境の中で「自分はいろんなことができない人間だ」と劣等感を抱いてしまわないかが気がかりです。

 心理学では、「自分はこういう人間だ」と思うと本当にそうなってしまうという、ラべリングという効果が認められています。子どもは、自分の出来不出来が生まれ月のせいだなんて分かるはずがありません。それゆえに、自分が人より遅く生まれただけなのに「自分は足が遅い」「皆ができることができない」「能力がない」と思い込んでしまう可能性が高いです。

 実際、カナダの国技アイスホッケーで、代表選手に1、2、3月生まれが多いという事態が起きました(カナダは1月から学年が変わります)。デンマークでは、子どものそうした意識を防ぐために「10歳までは能力別にクラス分けをしてはいけない」という政策がとられているくらいです。

 私は、競争させること自体には賛成派です。競うことにより相乗効果で自分の力以上のいい結果が出せることが多々あるからです。ただ、生まれ月でだいぶ発育が違うときに、順位づけや競争をさせるやり方は、4月生まれに近い子が優越感をもちやすく、早生まれの子が劣等感をもちやすくなるだけで、結果が明らかな勝負です。絶対に反対です。

 親の目が届かないところでつくられた子どものマイナスの思い込みは、自宅でのケアが重要です。とにかく、息子が「自分はできない子」というラベルを貼ってしまわないように、もし貼っていたら剥がしてしまうように、褒めて褒めて褒めるようにしています。マラソン大会も、順位には触れず、「こんなに長く走れるなんてすごいね! 500メートルなんてママは体力ないからできないよ」と。粘土の作品も、「すごい、前よりずっときれいに作れるようになったね! ちゃんと髪の毛と耳がついてるね」と。まだ幼稚園児ですから、褒める点を見つけるのも一苦労ですが。

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高度なことをやらせればいいわけじゃない