なぜなら、10月に消費税を増税すると決めておけば、その直前、すなわち、選挙直前の6月7月は、増税前の駆け込み需要で住宅、自動車、家電などの売り上げが爆発的に伸び、空前の好景気になるからだ。14年4月の増税の時に、その直前にとんでもない駆け込み需要で景気が一時的に滅茶苦茶よくなったのを覚えている方も多いだろう。

 それ以外にもさまざまな小道具が用意されるだろう。例えば、東京の最低賃金だ。昨年の10月に東京都の最低賃金は958円になった。その時の引き上げ幅は26円だ。最低賃金の引き上げの実施は10月だが、発表は9月1日、実際には初夏にはほぼ数字が決まっている。18年、19年と20数円の引き上げを行えば、めでたく東京都の「最低賃金1000円」が実現する。この数字のインパクトは大きい。「東京で1000円実現! 全国の最低賃金も1000円を目指して上げていこう!」と声高に宣伝されるはずだ。パートやアルバイトの人たちを喜ばせるには、非常にわかりやすい数字である。

 19年春の天皇退位と新天皇即位に伴う休みを10連休にすれば、お祭り気分を盛り上げるのに最適だ。そんなことに利用するつもりで、新天皇の即位を4月でなくて、より選挙に近い5月にしたのかなと勘繰りたくなってしまうほどだ。

 こうして内閣支持率が上がり、改憲への賛成が増える。そして、念願の憲法改正。

 それが安倍総理の計算だろう。

●増税延期したらどうなるか?

 一方、もし仮に増税延期をする場合はどうなるか考えてみよう。19年10月の話だから4月ごろに決めればよいと思う方もいるかもしれないが、そうはいかない。そこが決まっていないと、19年度の税収がわからず、19年度予算が組めないからだ。企業の生産計画などにも大きな影響を与える。やはり、延期するなら、新年度予算に反映できるようにするため、予算編成時期の18年12月に決定ということになる。

 ところが、これをやると、必ず議論になるのが、前回の消費税増税延期の時に、大事な税金についての政策変更だから信を問う必要があると言って、解散総選挙を強行したこととの関係だ。全く同じ状況なので、選挙をやらないというのが非常にむずかしくなるだろう。もちろん、だからと言って、そこで解散総選挙をして衆議院の3分の2を失えば、憲法改正の発議ができなくなるので、そんなことはできない。

次のページ