参議院選との同時投票の理由は他にもある。国民投票だけを単独で行うと、9条改正ばかりに焦点が当たり、一つ間違えれば否決ということになりかねないので、安倍政権としては、参議院選挙と同時実施にして、憲法改正の比重を薄めたいという思惑もあるはずだ。

 こうして、19年夏が、安倍首相の悲願成就の最大のチャンスになるということだ。

●19年の改憲国民投票で勝つための「バラマキ」

 国民投票で過半数の支持を得るための王道は、改憲についての国民的議論を巻き起こし、そこでしっかりと国民の理解を得ることである。しかし、それだと、議論が白熱して、必ずしも勝てるとは限らない。ここで失敗すれば、当面憲法改正はできなくなるので、もっと確実な方法を選ぶ必要がある。

 そこで考えられる安倍政権の必勝戦略が「バラマキ」だ。国民に対し、9条改正を正面から議論するのではなく、バラマキで景気が良くなっているという雰囲気を盛り上げ、安倍政権への支持を高める。そうすれば、国民は、「安倍さんのおかげで景気も良くなったし、よくわからないけど、改憲もまあいいんじゃないか」と改憲に賛成するだろうという読みだ。

 国民をなめているとしか言いようがないが、意外とそれが効果的かなという気もするのが悲しいところだ。

 今述べた理由により、18年から19年はとにかく徹底したバラマキが実施されるだろう。人づくり革命で子育て教育などに消費税増税分の使途を変更してまで大盤振る舞いするのはそのためだ。それ以外でも、日・EUのEPA(経済連携協定)対策の農林水産予算として3000億円のバラマキ。さらに、地方交付税の配分見直しで、東京都などの交付税を減らして、地方に厚く配分するのも地方へのバラマキの一環だ。さらには、北朝鮮ミサイル危機を口実にした「地下シェルター」建設による公共事業などのバラマキなども日本中で展開されるだろう。

 18年度予算案では、中小企業向け補助金の増額、医師会向けの診療報酬引き上げなど、業界向けのバラマキにも余念がない。

 一方、庶民最大の関心事は消費税増税だろう。

 19年夏の参議院選と国民投票が19年10月の消費税増税直前になることから、増税延期という説もあるが、私は、それはないと見ている。

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