古沢さんによると、「切手との図柄の組み合わせを工夫する」と、風景印集めがより楽しめるという。組み合わせにそれぞれの個性や感性が出るし、少しひねったコラボレーションもおもしろいという。

 例えば、作家、太宰治の墓の近くにある三鷹下連雀四局(東京都三鷹市)の風景印には、太宰が描かれているが、太宰の切手はない。そこで、太宰の命日「桜桃忌(おうとうき)」に絡めて、サクランボの切手と合わせるのだ。「ちょっとひねったマッチングができると収集仲間に自慢したくなる(笑)。知識が増えるほど選択肢も広がるため大人に向いた趣味だと思います」。

 また、古沢さんは「街の景色が大きく変わると、風景印の図柄も変わります。東京スカイツリーが建ち、図案が変わった局もあります。その局代々の図案を並べてみると、街の変遷が分かりますよ」とも話す。消印一つで、さまざまな楽しみ方があるのだ。

 兵庫県洲本市の50代の会社員男性は、少年時代、熱心に風景印を集めていた。「昔はスタンプラリーやポケモンGOなんてなかったので、子どもでも気軽に取り組める風景印集めは楽しかったです。これは何が図案になっているのだろう、と調べる面白さもありましたし、変形印に巡り合えるとわくわくしました」と振り返る。

 現在は、旅先などから風景印を押したハガキを送っているという。「相手へのプチサプライズというか、ちょっと楽しんでもらえるといいなと思っています」(前述の男性)

 古沢さんはこれから始める人に対して、「コレクション趣味は、一気に熱中して急に冷めてしまう人がいます。風景印は期間限定ではないし、数もたくさんあるので、ゆっくり、長く集めていってほしいです」とアドバイスを送る。

 風景印は、規定の郵便料金以上の切手が張ってあるはがきや台紙を郵便局の窓口に持って行くと押してもらえるが、希望の郵便局に切手を張った台紙を送り、風景印を押して返送してもらう「郵頼(ゆうらい)」という方法もある。

 筆者も試しに、地元の兵庫県・淡路島の洲本局(洲本市)と淡路灘局(南あわじ市)に風景印を押してもらいに行ってきた。洲本の風景印は洲本城、淡路灘は灘黒岩水仙郷とそれぞれ図案が違っていて面白い。次回はどこの局に行こうかと考えると、わくわくしてきた。(ライター・南文枝)