一方、50代の男性は「よその歯科医院で『歯周病がどうにもならないくらい悪化しているから、すぐ抜歯してインプラントを入れるしかない』と言われた」と、セカンドオピニオンを求めて駆け込んできました。抜歯が避けられないケースもあり、「抜かない歯科医師=いい歯科医師」ではないのですが、良医であれば高額なインプラントありきの抜歯ではなく、他の選択肢も含めきちんと説明してくれるはずです。

 実際、歯周病専門医が診察してみると、歯の揺れはあるもののまだ抜歯する段階ではなく、手術で歯肉の奥についた歯石を除去することで十分回復が見込めました。結局、患者さんは歯周病専門医のいる歯科医院へ転院することになり、治療に時間はかかったものの抜歯することなくいい状態を保っています。

■「患者さんのことを一番に考える」のが、いい歯科医師の基本

 そもそも「信頼のおけるいい歯科医師」とは、どのような歯科医師なのでしょうか。

 基本中の基本は、患者さんのことを一番に考える歯科医師であること。これは歯周病にかぎらず、小児歯科やむし歯、歯科矯正といった歯科医療全般に通じるものです。

「患者さんに感染が起きないように清掃や滅菌は徹底しよう」

「患者さんが一生自分の歯で噛めるように、時間をかけてブラッシング指導をしよう」

 このように、歯科医師の「患者を思う気持ち」は、院内の清潔や説明、治療、指導など、あらゆる場面に反映されるものです。

■歯科でもセカンドオピニオンの活用を

 誰だっていい歯科医師にかかりたいに決まっています。よく患者さんから「先生は自分や家族が歯科治療を受けなければならなくなったとき、どうやって主治医を見つけるんですか」と、聞かれることがあります。歯科医師の場合は歯科の知識がありますし、歯科医師同士の長年の付き合いの中で人柄や知識、技術力、どのような方針で治療をしているのかなどをある程度わかっているので、信頼できる歯科医師を見つけるのはそれほど難しいことではないのです。

次のページ
歯科医を選ぶポイントは?