カテーテル治療は経皮的冠動脈形成術(PTCA、PCI)といい、足の付け根や手首などの動脈からカテーテルを入れ、冠動脈に到達させ、狭くなったり、詰まったりしている冠動脈の部位でバルーン(風船)を膨らませて血管を広げ、そこにステントという筒状


の金網を広げて補強します。

「一刻を争う緊急事態において、まず選択される治療です。薬の効果が不十分な人に対して選択されることもあります」(同)

 ここ7~8年でステントの性能も上がっています。冠動脈が再び詰まるのを防ぐために、「薬剤溶出ステント」という、薬剤がコーティングされているステントも登場しました。薬剤溶出ステントは、ステントがむき出しになっている時期が長くなるため血栓が付着するリスクがあり、抗血栓薬を2種類長期間飲まなければならないというデメリットがありましたが、今は、ステント血栓症の危険性は大幅に改善し、薬剤をコーティングするポリマーが溶けて、金属のみが残るステントも出てきました。さらに最近、3~4年経過すると、ステント自体が完全に溶けてなくなる、生体吸収性ステントが保険承認されました。

「治療直後と1年以後に血栓症が起こる場合があるという報告により、安全性などを検証するために、現在、治験を実施した病院を中心に市販後調査という試験が追加でおこなわれています。その検証が済む1~2年後にはさらに普及が期待されます」(同)

 血管内には“異物”がないほうが、血管内皮が安定し、血管内が修復され、動脈硬化の進行が遅くなる可能性があるなど、血管本来の機能が高まるため、生体吸収性ステントはメリットがあるのです。

「ただし、カテーテル治療は根本治療ではなく、詰まった場所の血流を再開通させる治療ですから、薬物療法や生活習慣病の改善も同時におこない、再発を防ぎ、心不全に進行することのないようにすることが大切です」(同)

■外科治療 厳しい病変、糖尿病患者には冠動脈バイパス術が確実

 狭心症や心筋梗塞に対する外科治療は、冠動脈バイパス術という手術です。

「胸を開くため、からだへの負担が大きく敬遠されがちですが、一度の手術で済み、再発のリスクが少なく、退院後も予後のよい確実性の高い治療です」(橋本医師)

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高齢化で増える複合手術