ある日のこと、家中のカーテンが切り裂かれているではありませんか。さらに私のお気に入りの服もビリビリに。私の両親の写真立てはバリバリに割られていました。認知症にでもなったのかと唖然としましたが、義母は暴君と化していただけでいたって正気。我が家はこの日から崩壊していきました。

 夫は手に負えない自分の母親のことで思い悩み、生活が乱れるようになりました。おばあちゃんを怖がる子どもたちは家を出て兄妹で暮らすことに。私は心労でやせ細り、結局仕事を辞めました。それからは姑に怯え、姑の言うとおりに食事の支度をする毎日。それが義母が亡くなるまで続き、数年前に亡くなった時は「ようやく終わった」と涙が止まりませんでした。

<専門家・前野マドカさん(幸福学)からのアドバイス>

「この人を嫌な目に遭わせてやろう」と本気で思う人はいません。相手に嫌な思いをさせている人は、自分も嫌な気持ちでいるものです。

 お義母さんがカーテンを切り裂くまでになった感情は相当のものだと思います。幸子さんも傷つき、つらい思いをされたでしょう。でも、お義母さんがそこまでの感情を持つまで関係を修復しなかったのは、幸子さんにも問題がなかったわけではありません。最初に一緒に暮らしていた娘さんも幸子さんと同じ。母親を理解したり、感謝したりすることで、お母さんは変わったはずなのです。

 老人は寝る時間が早いので、早く夕飯を食べたかったのかもしれません。お義母さんの言い方がきつくても、自分が忙しくても、お義母さんが夕食を早く食べる方法を一緒に考えればよかったのです。自分が変わらなければ相手は変わらない。これは人間関係における絶対の法則です。

まえの・まどか/慶應義塾大学大学院附属システムデザイン・マネジメント研究所研究員。サンフランシスコ大学、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て現職。幸せを広めるコンサルティングなどを行う。

(文/島田ゆかり)