では、鏡を見て、口角を上げてみてください。意識すると、顔の筋肉が動くことがわかります。「よし、じゃあ、今度笑えなくて困ったときは、ここの筋肉を動かそう」。そんなふうに、笑顔を研究してみると、「笑顔=精神論」だったのが「笑顔=筋肉の動き」


へと変わります。そんなふうに言うと身も蓋(ふた)もないですが、コントロールできるものだと思ったら、ちょっと気が楽になりませんか? 笑顔恐るるに足らず、です。

「つくり笑い」は良くないことだと思われますが、とりあえず笑顔をつくってみると、無表情だった5秒前よりも気持ちも明るくなってきます。顔の表情が心に作用することを、心理学では「フェイシャル・フィードバック」と呼ぶそうですが、私の実感としても、笑顔を「つくる」ことで何もしないより確実に気持ちが上向きます。

 ラジオの場合、リスナーには顔は見えません。それでもやはりスタジオで喋っているときの表情は、話の内容や喜怒哀楽に合わせて、大きくつくるようにしています。

 明るい話題は満面の笑顔で、悲しいストーリーを紹介するときは眉の下がった悲しい顔で。なぜなら顔と感情がちぐはぐだと人はとても不安になるのです。そして、その不安をまとった「声」が喋り手の感情を伝えてしまうからです。

 そういえば、俳優の竹中直人さんの芸で、「笑いながら怒る人」というのがありますよね。逆説的ですが、あれが芸として成立するということは、それだけ、「顔」と「感情」と「声」が一致していないことに人間は違和感を覚えるという証拠ではないでしょうか。

 これから人と会って話すのに、楽しい気分になれない。テンションが上がらない。そんなときは焦らずに、思い切り笑顔をつくってみる。「あははははー」と声に出して笑ってみるのも効果的。「何やってるんだ自分?」と客観的にツッコミもできますし、そんな自分も愉快に思えてくるのがミソです。ただ、くれぐれも「おかしな人!」とびっくりされないよう、まわりにご注意くださいね。