心理的な疾患類にもなぜかブームがあり、近年注目を浴びはじめて、今年になってかなりクローズアップされたのが、この発達障害です。

 発達障害というのは、さまざまな領域がある広い概念なのですが、最近クローズアップされているのは、ASDと注意欠如(多動)障害(ADHD/ADD)です。発達障害は、いわゆる「病気」ではないので、後天的にかかるものではなく、その人の先天的な「特徴」とされています。

 自閉症スペクトラム障害の「自閉症」の部分は、

・相互の対人的―情緒的関係の欠落
・非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥

などが大きな特徴です。つまり相手の気持ちをくみ取って、共感することや、表情などの非言語的な情報を理解することが、その人の脳の特徴として得意ではありません。このような特徴を持っていると、情緒的な関係性である夫婦の関係にも大きな困難がありそうなことが想像されます。実際、ASDの夫を持つことによる妻のストレス状態には、カサンドラ症候群という名称まであります(診断マニュアルに掲載されている疾患名ではありません)。

 人間には当然、得意不得意があり、あることが不得意だからといって、その「人」に問題があるということにはなりません。ある人が方向音痴だからといって、人間として問題があるということはないのと同じように、情緒的処理が苦手だというのも同じです(いずれも、本人が不自由だったり、周りの人が戸惑うことはあり得ます)。

 逆に、最近ではネットでもASDのことが多く取り上げられているので、夫婦間でコミュニケーションがうまく取れないとか、パートナー(主に男性側)が共感してくれない、というときに、夫はASDじゃないのか?というご相談も少なくありません。

 ちなみに、「スペクトラム」というのは、0か1かではなく「程度問題」ということです。骨折なら、ひびもふくめて骨折しているか、していないか、という0か1ですが、精神疾患の多くは、程度問題なのです。ある一定レベルを超えると診断されるし、越えなければ「そういう傾向が高い」人、ということになります。

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ADSを持つ夫婦がした工夫とは