夫とコミュニケーションがうまくいかない、妻と話ができない。そんな悩みを抱える夫婦は多い。特に、外出する予定があって急いでいるのに相手が思うように動いてくれなかったり、渋滞に巻き込まれているときに子どもがグズったり、イライラが高まっているときの「追加のストレス」は要注意だ。臨床心理士でカップルカウンセラーの西澤寿樹さんが夫婦の間に起きがちな問題をやさしくひもとく本連載。今回は、発達障害が隠れているケースもあるという、「夫婦のすれ違い」について解説します。

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 この間の日曜日のこと。子どもを連れて家族全員でショッピングモールに買い物に行こうとしていた清子さん(仮名)は、イライラしていました。出がけに子どもがジュースを冷蔵庫から取り出そうとして床にぶちまけてしまったり、いくつか面倒なことが重なっててんてこ舞いになっていたのに、夫はソファでぼーっとテレビを見ていたからです。清子さんが、

「テレビ見てるんなら、何か手伝ってよ」

と言ったら、夫が

「何かってなんだよ!」

と、突然キレはじめてしまいました。結局、夫の機嫌は直らず、子どもたちと3人で出かけることになったというのです。

 清子さんが言うには、夫はいま、仕事のポジションが変わったばかりで大変で、疲れているのは分かっている。だから、出かける支度を自分がするのは構わないし、もし出かけたくないなら、そう言ってくれれば家で寝ていてもいい。手伝えない理由があるのなら、それを言ってくれればいい。でも、突然キレるのは理由がわからない、気に入らないことがあるなら言ってほしいし、もう私のことが嫌いになったならそれでもいいから、ちゃんと話してほしい、といいます。

 夫に話を聞くと、

「自分が悪かった」
「申し訳ない」
「これからはそういうことがないように努力する」

などとおっしゃっていて、実質的な話がなかなかできません(ちなみに、これを「反省しているからよし」として話を終えると、同じことが繰り返されます)。

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西澤寿樹

西澤寿樹

西澤寿樹(にしざわ・としき)/1964年、長野県生まれ。臨床心理士、カウンセラー。女性と夫婦のためのカウンセリングルーム「@はあと・くりにっく」(東京・渋谷)で多くのカップルから相談を受ける。経営者、医療関係者、アーティスト等のクライアントを多く抱える。 慶應義塾大学経営管理研究科修士課程修了、青山学院大学大学院文学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得退学。戦略コンサルティング会社、証券会社勤務を経て現職

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隠れた夫の本音とは?