ソフトバンク時代の松坂大輔 (c)朝日新聞社
ソフトバンク時代の松坂大輔 (c)朝日新聞社

 12月21日、中日ソフトバンクを退団した松坂大輔の入団テストを来年1月に行うと発表した。数日前から噂されていたが、正式に発表されたことで中日の地元・名古屋を中心に大きな反響を呼ぶこととなった。改めて松坂という投手の存在の大きさを感じるが、果たして今の中日に松坂は必要なのだろうか。結論から先に述べると「ノー」と言わざるを得ない。

 まず、大きな問題となるのが現在の中日のチーム状況である。今シーズンも4位の巨人から12ゲーム差をつけられる5位に終わり、これで球団ワースト記録を更新する5年連続のBクラスに終わった。落合博満前GM主導の社会人、大学生偏重のドラフト戦略が機能せず、チームに若さが足りない状況なのは誰の目にも明らかである。

 それを打破するために必要なのは、とにかく若手を抜擢して世代交代を進めることだ。その状況で松坂が入ることになると、若手の貴重な実戦機会を奪うことは間違いない。若手投手のコーチ的な役割を果たすという意味もあるのではないかという声もあるが、そのポストも来季からコーチ兼任となる岩瀬仁紀、実績のある山井大介、吉見一起もおり、無理に獲得する必要性は感じられない。

 次の懸念点は、故障によって長期離脱した投手の復活が極めて難しいことだ。かつて中日で復活を果たした中村紀洋は米国から日本に戻って成績を残せずに戦力外になったという意味では現在の松坂と似た状況にあったが、中村は野手だったという点が大きく異なっている。投手では、松坂の名前の由来にもなった荒木大輔(当時ヤクルト)がヒジの故障から約4年のブランクを経て勝利をマークし、近年では由規(ヤクルト)が2016年に肩の故障から復帰して1786日ぶりの勝利を挙げたという事例もあるが、その後の成績は芳しいものではない。また荒木、由規のふたりが復帰したのは20代後半の時であり、来年で38歳を迎える松坂より10歳近く若かったことも忘れてはいけない。

 そして三つ目の不安は、肝心の松坂の状態が一向に上がってこないところである。2015年にソフトバンクに入団してからの3年間での一軍登板はわずかに1試合(2016年)。その試合も1回を投げて5失点と、復活の兆しは全く見られなかった。そのシーズンのオフにはプエルトリコのウインターリーグに参加して好投した試合もあったものの、結果としては4試合で0勝3敗という寂しい数字に終わっている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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