「スケジュールへの適応が最大の難関になる。日本とメジャーでは試合数、遠征時の移動距離も大きく違う。体力的な負荷は比較にならず、“二刀流”にこだわるがゆえの負担の大きさは想像するのは難しい。疲労をためないように、周囲は慎重な配慮が必要になるはずだ」

 日本の1シーズンは143試合なのに対し、メジャーは162試合。約180日程度でこれだけのゲームをプレーするスケジュールの厳しさは実際に半端なものではない。単に日本よりゲームが多いというだけではなく、必然的に休養日も減るわけだから、これは大変な違いである。

 また、移動距離も長く、米国国内の東西移動の距離は札幌―福岡の約3倍。東西3時間の時差がある巨大な国を飛び回り、日本で積み重ねてきたよりハイペースで試合を行うことになるのだ。

 仮定の話だが、エンゼルスが優勝争いをするようなチームになった場合、11月まで多いと180試合以上をプレーすることもあり得る。ただでさえ、どんな選手にとってもハードなのに、大谷が二刀流にこだわり、疲れから徐々にパフォーマンスが落ちた場合、風当たりが強くなることは考えられそうだ。

「一部の専門家は最終的には大谷は二刀流を諦め、どちらかに専念しなければならないと考えている。歴史を作るべく、大谷が限界に挑戦するなら、魅力的な話題になっていくだろう」

 エンゼルスへの入団が決定直後、ESPN.comのジェリー・クラスニック記者はそんな風に記していた。近年では前人未到のことをやるわけで、成功への青写真は米国には存在しない。難しいからこそ、余計に楽しみで、そしてエキサイティング。大谷が広大な米国の大地で挑む“二刀流”は、大げさではなくメジャー史上に残る挑戦と言えるのだろう。(文・杉浦大介)