だが、次打者・小林誠司の鋭い当たりの投ゴロを「抜けた!」と早とちりしたのか、三塁走者のマギーが大きく飛び出してしまった。

 ボールを持った大野雄大が自らタッチしようと突進すると、マギーは何を思ったか、三塁ベースではなく、内野席方向にスタコラサッサと逃走。

 これが鬼ごっこなら、「マギーの勝ち!」だが、野球のルールでは、走者が野手のタッチを避けようとして、塁と塁の間の直線を中心に3フィート(約91.4センチ)の幅を大きく超えて走った場合は「スリーフィートオーバー」が適用される(野球規則7.08a)。大野とゲレーロが指差しながらラインアウトをアピールし、佐々木昌信三塁塁審が右手を突き出すようにして「アウト!」をジャッジしたとき、マギーはカメラマン席の近くまで達していた。

 元メジャーリーガーらしからぬ珍走塁が災いして先制機を逃した巨人は、延長12回の末、サヨナラ負け。一方、大野も7回まで巨人打線を2安打無失点に抑えながら、8回に同点を許して降板。マギーに逃げられたばかりでなく、シーズン初白星にも逃げられてしまった……。

●プロフィール
久保田龍雄
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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