中日・ビシエド(左)と巨人・マギー (c)朝日新聞社
中日・ビシエド(左)と巨人・マギー (c)朝日新聞社

 2017年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「巨人vs中日珍プレー対決編」である。

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 野球のルールは複雑、かつ奥が深い。

 言い換えれば、ルールを熟知し、状況に応じて瞬時にベストの判断、対応ができれば、味方のピンチを救う頭脳プレーも可能になるのだ。

 これを見事に実践したのが、巨人の主将で内野の要の坂本勇人だった。開幕ゲームとなった3月31日の中日戦(東京ドーム)、4対0と巨人リードで迎えた4回表無死一塁で、ビシエドがショート・坂本の頭上に高々と飛球を打ち上げた。

 そのまま捕球して1死一塁と思いきや、坂本はビシエドが一塁に走っていないのを確認すると、ワンバウンドで捕球後、セカンド・中井大介にトスして、6-4-3の併殺を完成させた。

 無死一塁が、あっという間に2死無走者。

「えっ、インフィールドフライじゃないの?」と目を白黒させたファンもいたはずだ。そもそもインフィールドフライは、併殺狙いの故意落球を防止するために設けられたルールではなかったのか?

 ところが、インフィールドフライが成立するのは、無死、または1死一、二塁、もしくは満塁のケースであり、無死一塁は対象外なのだ。

 これは打者走者がきちんと走っていれば、たとえ故意落球があっても併殺は防げるという理由からで、わざわざ怠慢プレーを救済してやるほどルールは甘くはない。アウトと自分で勝手に決めつけて、一塁への走塁を怠ったビシエドが悪いのだ。

 坂本はこの日、2点差に追い上げられた5回には右越え2ランを放ち、攻守にわたる大活躍でチームの開幕白星に貢献。ルールは守るだけではなく、応用するものでもあるということをアピールしたが、一部で「セコイ!」の声が上がったのも事実。

 おそらく、ビシエドもそう思ったはず。それから4カ月後、場所は同じ東京ドームで、巨人ナインが「やられた!」と天を仰ぎたくなるようなビシエドの“逆襲”が待ち受けていた。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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