巨人・長野久義 (c)朝日新聞社
巨人・長野久義 (c)朝日新聞社

 2017年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「間が悪かった人々編」である。

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 人間誰しも、間の悪いときがあるものだが、長野久義(巨人)にとって、4月11日の広島戦(東京ドーム)は、「間が悪い」だけでは片づけられないような厄日となった。この日、長野は東京ドームで行われた巨人戦限定の球団企画「プレーヤーズ・デー2017」の対象選手として、文字どおり、主役級の活躍が期待されていた。

 ところが、2回無死一塁の1打席目は投ゴロ併殺打、1点リードで迎えた4回1死一塁の2打席目も遊ゴロ併殺打と、なかなか見せ場をつくれない。そして、守っても、3対0とリードして迎えた6回にとんでもない悪夢が襲ってきた。野選で1点を返され、なおも2死二、三塁で、代打・小窪哲也の右翼上空への打球は、思った以上にグングン伸びる。前進守備をとっていたライト・長野は懸命にバック。フェンス際でかろうじて追いついたように見えた。

 しかし、捕球寸前で足がもつれてバランスを崩し、後方にそり返った際に、フェンスに頭をしたたかに打ちつけてしまい、思わず尻もち。ボールがグラウンドにこぼれ落ちている間に2者が生還して3対3の同点に。あまりにも高価な転倒となった(記録は三塁打)。

 さらに、皮肉なことに長野が転倒したフェンスには「Good luck.Good life.」の文字がデザインされていた。その前でハードラックを絵にかいたような男が倒れている構図は、形容しがたいものがあった。

「前進守備だったけど、捕らなきゃいけなかった」(長野)

 治療を受けて引き続き守備についたが、その裏の打席が回ってきたところで亀井善行を代打に送られ、“長野デー”にもかかわらず、無念の途中交代。「名誉挽回を」とはやる気持ちが空回りしてか、開幕以来、得点圏で22打数無安打と悩める日々が続く。5月19日のDeNA戦(横浜)の7回1死一、二塁、0対0の均衡を破る2点タイムリー三塁打を放ち、シーズン初適時打。ようやく長いトンネルを抜け、「グッドラック」となった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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