阪神・藤浪晋太郎 (c)朝日新聞社
阪神・藤浪晋太郎 (c)朝日新聞社

 2017年もさまざまな出来事があったプロ野球。華々しいニュースの陰でクスッと笑えるニュースもたくさんあった。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「意外なヒーロー&天敵編」である。

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 プロ1年目から3年連続二桁勝利を挙げた藤浪晋太郎(阪神)だが、2017年は制球難を克服できず、自己ワーストの3勝5敗に終わった。そんな苦境にあっても、改めて“持っている男”であることを証明したのが、4月13日のDeNA戦(横浜)だった。

 この日の藤浪は、与四球1と制球も安定し、8回を6安打1失点に抑えたが、味方打線も井納翔一を打ちあぐね、8回を終わって1対1。「好投すれども報われず」で終わりそうな空気が漂いはじめた9回表、グラウンドに乱入した1匹の“トラ”が幸運を運んできた。

 無死一塁、梅野隆太郎のカウント2ボールのときに、一塁側に黒の模様にグレーの毛並みの虎柄猫が現れたのだ。このため、試合は一時中断。猫は一塁側ベンチ横のカメラマン席に追い込まれ、そのまま逃げ去った。

 そして、このハプニングによる試合中断が、勝利の女神を阪神に引き寄せる。この回、高山俊の右前決勝タイムリーなどで一挙3点。その裏を守護神・ドリスが無失点に抑え、藤浪にシーズン初勝利をプレゼントした。

 藤浪といえば、2013年8月31日の広島戦(甲子園)で、グラウンドにイタチが乱入した事件が思い出されるが、この試合でも、セリーグの高卒ルーキーでは、67年の江夏豊(阪神)以来46年ぶりの二桁勝利を達成。グラウンドに動物が乱入すると、藤浪が勝ち投手になる。不思議なご縁と言うしかない。

「頑張れ、阪神園芸!」

 こんな声援とともに、ツイッター上で、甲子園のグラウンド整備を担当している造園会社・阪神園芸がトレンドの1位になったのが、10月15日のCSファーストステージ第2戦、DeNA戦だった。

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久保田龍雄

久保田龍雄

久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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ヒーローインタビューは阪神園芸さんでええやん