■歯周病は「静かな殺し屋」

 健康な歯は歯肉や歯槽骨などの歯周組織にしっかり支えられ、簡単には抜けない仕組みになっています。歯周病になったからといってすぐに歯がグラグラになるわけではありませんが、それならなぜ抜歯に至るケースが多いのでしょうか。

 最も大きな理由は、歯周病の初期は自覚症状が乏しく、早期発見がしにくいこと。むし歯の場合はかなり早い段階から患部がしみる、痛むといったはっきりした症状が現れるので、歯科医院に行くきっかけになります。しかし、歯周病の初期症状は、歯肉(歯ぐき)がむずがゆい、ブラッシングの後に出血するなどはっきりしない症状が多く、歯周病と結びつけるのは難しいのです。また、いずれも歯科医院に駆け込まざるを得ないようなつらい症状ではないことも、早期受診の機会を逃す一因といえるでしょう。歯がぐらつく、膿(うみ)が出るなど、本人が「明らかにまずい」と気づく症状が出てくる頃には、かなり進行しています。

 歯周病は、「サイレント・ディジーズ(静かに進行する病気)」という別名がありますが、症状に気がついたときには抜歯が必要になっていることも多いため、「サイレント・キラー(静かな殺し屋)」ともいわれています。多くの人は歯を失ってからその価値を実感しますが、それでは遅いのです。

■日本人の7割以上が歯周病

 あなたは「歯周病なんて自分には関係ない」と思い込んでいませんか。実は、日本人の約7割が歯周病だという恐ろしいデータが出ています。

「歯科疾患実態調査(2011年)」で歯周病の目安となる「歯肉の状態」を調べた結果から、すでに歯がない人を除き、「歯石の沈着がある」「歯周ポケットの深さが4ミリ以上」など何らかの歯周病の症状がある人は、20代で約70%もいることが明らかになりました。65歳以上の高齢者になると、歯のない人以外はほぼ全員が歯周病です! これは軽症の人も含めた数字ですが、「進行した歯周病」の割合は20代を超えると増加し、55歳以上は半数以上に重症化が見られます。

 歯周病は誰もがかかる可能性のある病気。年代や性別問わず、注意しなければならないのです。