大物政治家にも本人に直撃しました。鳩山由紀夫元総理が、バミューダに籍を置く香港の企業の名誉会長に就任しているという記録がパラダイス文書にあったのです。那覇の書店で講演会があると聞きつけ、同僚の記者が講演後にぶら下がり取材。「(役員就任は)形だけ。(バミューダとの関わりは)知らない」というコメントが得られ、記事にすることができました。

――いくつもの秘密文書と向き合い、取材し、タックスヘイブンについて発信してきました。いま何を思いますか?

 タックスヘイブンで誰が何をしているのか。これまで分析と取材を重ねてきましたが、いまだにその全体像はよくわからない、というのが正直な実感です。しかし、そのわかりにくさを隠れ蓑に、大企業や大富豪、政治家など社会的地位のある人を含め、税金を逃れたり、規制を逃れたり、大きな利益を温存したりする。そのしわ寄せは多くの国民や中小企業に向かう。格差の拡大をさらに加速させる。これは心配です。

 内部告発は今後さらに続くでしょう。租税回避であったり、規制回避であったり、顕名回避であったり、そうしたタックスヘイブン利用の実態がこれからも明らかにされるでしょう。もしそれが違法だというのならば国税とか警察とかの当局が取り締まるでしょうし、もしそれが合法だというのならば、その制度そのものの適否が議論の対象になるでしょう。それはパナマ文書の報道で現実に起きていることで、今後も続くでしょう。実態が白日のもとにさらされることで、初めて世の中に広く問題が提起され、対策が議論され、対応がなされる。そうした議論や対応にそのための素材を提供して貢献することが私たちジャーナリストの役割の一つだと思っています。

(取材・構成/中津海麻子)