「国民の人権擁護が自分の使命と自覚している理想的な裁判官」(薦田氏)というように周囲の評価は高い。

 野々上氏をよく知るという元判事の井戸謙一弁護士(63)は「裁判官として非常に優れた資質を持った人」と評する。

「人柄がよくて部内の人望も厚いうえ、上司の顔色をうかがって仕事をするようなこともない。国の責任を認めるような判決を出す傾向があると分かっていても、判事としての実力がある以上、人事部局でもそれなりの処遇をせざるを得ないのです」

 これで仮処分による原発の差し止め命令は、福井地裁と大津地裁がそれぞれ15年と16年に出した高浜原発3、4号機に続いて3例目。野々上氏は今月下旬で定年退官するが、続く裁判官はいるのか。井戸氏が続ける。

「正義感のある裁判官はいつも一定数いて、いまの高裁のなかにもあと何人かいます。それに原発裁判については厳しく当たらなければいけないと考える判事が増えている。電力会社は高い費用を投じて原発を動かそうと思ったら司法に停められる。そろそろ原発から方向転換する時期でしょう」

 一方、四国電力は今回の決定を不服として、保全異議と執行停止の申し立てを行う予定。原発が動かせない代わりに、火力発電9基の稼働率を上げる。「毎月35億円ほど燃料費が膨らむ」(広報部)という。(桐島瞬)