この取材で、ビルの管理側も把握しているのは間違いないことがわかった。だが、たとえ家賃を支払っていても、元々は屋上の住宅群の成立の背景には、スラム的な要素があった。それを合法的に暮らせるようにしたのは、空いた場所を有効に活用しようとする需要と供給がマッチしたからだ。勝手に住み着かれるのであれば、住人として認めて家賃をとってしまったほうがいい商売になると考えた香港人のたくましさゆえであろう。その結果、世界でも珍しい居住スタイルが生まれたというわけなのだ。

(文/ジャーナリスト・丸山ゴンザレス、イラスト/majocco)

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丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス

丸山ゴンザレス/1977年、宮城県出身。考古学者崩れのジャーナリスト。國學院大學大学院修了。出版社勤務を経て独立し、現在は世界各地で危険地帯や裏社会の取材を続ける。國學院大學学術資料センター共同研究員。著書に『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』(光文社新書)など。

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